背景.心膜原発悪性中皮腫は全悪性中皮腫の0.7~2.0%と稀だが極めて予後不良の疾患とされる.今回,局所温熱化学療法及び全身化学療法を行い,2年以上無症状で生存した症例を経験したので報告する.症例.72歳女性.夜間就寝時の呼吸困難を主訴に来院した.胸部造影CTにて心基部に約10 cm の腫瘤が多量の心嚢液及び両側胸水とともに認められた.縦隔鏡による傍大動脈部リンパ節生検にて二相型悪性中皮腫と診断され,胸膜病変を認めないことより心膜原発と考えられた.心嚢液に対してはマイトマイシンによる心膜癒着術を行い,胸水に対してはシスプラチン(CDDP)を用いた温熱化学療法及びタルクによる胸膜癒着術を行った.また,その後ビノレルビン(VNR)の単剤投与(20 mg/m^2,3週ごと)を行い,初診から約26ヶ月間無症状にて経過している.結論.心膜原発悪性中皮腫においても積極的に局所療法及び全身化学療法を行うことで2年以上の長期間生存する症例がある.今後その適応や手段について一層の検討が必要であり,症例の集積が望まれる.